こんにちは、中華飯です。
今回は「人はなぜ物をほしがるのか」という本の書評です。
「もっと所有したい」という欲望について書かれた本になります。
所有とは何か、なぜ人は物を欲しがるのか、そして所有することで本当に幸せになれるのか。
この本を通じて、所有欲の本質に迫っていきましょう。
所有とは何か
奇妙な裁判のエピソード
本書では、所有とは何かという問いが投げかけられています。
その中で、非常に興味深いエピソードが紹介されていました。
ある男性が交通事故で足を動かなくなり、足を切断したという出来事がありました。
その後、その男性は借金で首が回らなくなり、自宅の財産を売り払うことになりました。
その売り払った中に、本人は知らない間に、自分の足が入った箱も一緒に売ってしまったのです。
購入
それを買った人が、人体の足が入っていて驚きました。
そして持ち主を探したところ、交通事故で足を切断したこと、その本人が知らない間に売却してしまったことが分かりました。
このことが世間的に大きく取り上げられたことで、この足には何か価値があると考えられるようになったのです。
体の一部は誰の物?
本人が「それは自分の足なので返してください」と要求したところ、買い主は「この足は僕が買ったものだから、これは僕のものだ」と主張し、裁判になりました。
結果的に、裁判の結果は「本人(足を切断した人)から所有者(その足を買った人)に対して5000ドルを払えば戻してもいいということになりました。
奇妙なのは、その足は本来自分のものだったはずなのに、切り離した瞬間に所有権の移動が可能になる(売却することによって自分のものではなくなる)という現象が起きていたことです。
これが「所有とは何か」という問いを考える上で、非常に示唆に富んだエピソードなのです。
所有と占有
実は、所有というのは人間にしかない概念です。
動物には所有という概念はなく、所有の代わりに占有をします。
占有とは、資源を思い通りに物理的に利用(持ったり、運んだり、座ったり)できる状態のことです。
所有と占有の違い
それに対して所有とは何が違うのか。
所有というのは、不在の時でも所有権が主張できることです。
占有の場合は、自分の近くに物がなければ、他の動物に使われてしまいます。
しかし、人間の場合は、たとえ所有者本人がその場にいなくても、勝手にその物を使うようなことはしません。
これが人間にしかない概念なのです。
なぜ人は物を欲しがるのか
著者は本書の中で、メインテーマを設定しています。
それは所有するということは、延長された自己概念の現れなのではないかという仮説です。
つまり、物を所有することで、自分の有能さをアピールしたいということです。
根本には、そのアピールによって異性を獲得したいというのがにあり、それが自己の概念の現れで、その自己の概念の現れがあるからこそ、「もっと所有したい」という欲望が起こるのではないかという仮説を立てています。
所有欲が生まれる3つのメカニズム
著者は、所有欲が生まれるメカニズムとして、以下の3つを挙げています。
- 相対性(慣れ)
- 損失の見通しが利得の見通しよりも重くのしかかる
- 所有したものは自己の延長になる
1. 相対性(慣れ)
所有というのは相対的なもので、物を手に入れた瞬間は嬉しくても、結局その状態に慣れてしまいます。
その慣れというのが相対性であって、何との相対性かというと、現在の状態との比較になります。
まず物を買う ⇒ 慣れる ⇒ 慣れた状態が現在になる ⇒ 新しいものを買う ⇒ 慣れる、というのが、延々と続くということです。
2. 損失の見通しが利得の見通しよりも重くのしかかる
損失の見通しというのは、利得の見通しよりも重くのしかかるという特徴があります。
所有した途端に、そのもの自体が価値があると思い込んでしまう。
だからそれを失う時は、買う前よりも損失したときの精神的ショックが大きいということです。
3. 所有したものは自己の延長になる
物を所有する前から、人間は「期待」をします。
期待して、それを所有したものは自己の延長になります。
つまり買った物が自分のアイデンティティの一部になるということです。
自己の延長になったものを、過大評価してしまうというサイクルで、「もっと所有したい」という欲望が起こるのではないかというのが、著者の主張の結論です。
所有で幸せになれるのか
世界中の研究の結果
本書の最後で、「人は所有で幸せになれるのか」という問いも投げかけられています。
これに対する答えは、明確にNO(所有では幸せになれない)なのだそうです。
メタアナリシスという手法で、あらゆる角度から「物を所有して幸せになれるのか」ということを検証した結果、人種も変えたり、年収によって変えたり、地域によって変えたりと、いろいろ調査しても「所有では幸せになれない」という結論が出ています。
ある程度の所有(必要最低限の物を持っている状態)の先の話ではあるもの、物を持つことと幸せの間には負の相関になるのだそうです。
物を持てば持つほど不幸になるということが、研究の結果明らかになっています。
なぜ所有すると不幸になるのか
そのメカニズムとしては、物を持つということは、それを失うということもセットになるということです。
つまり、物が増えれば増えるほど、物をなくすという危険性も一緒に増えていってしまうのです。
物をなくすと、人間は精神的にショックを受けるので、結局物を持てば持つほど、ストレスが溜まっていくというのです。
物が増えるほど、幸せにはなれないという結論なのです。
まとめ
「人はなぜ物をほしがるのか」という本は、所有欲の本質について深く考察した本です。
所有とは、不在の時でも所有権が主張できる人間特有の概念であり、それは延長された自己概念の現れであるという著者の仮説は、非常に興味深いものです。
また、所有欲が生まれるメカニズムとして、相対性(慣れ)、損失の見通しが利得の見通しよりも重いこと、所有したものは自己の延長になるという3つの要因が挙げられています。
そして、所有と幸福の関係については、メタアナリシスの結果、明確に負の相関があることが示されています。
物を持てば持つほど、失うリスクも増え、ストレスが溜まっていくというのは、現代の消費社会を生きる私たちにとって、非常に重要な示唆を与えてくれます。

